序章:スペイン無敵艦隊撃退後のイングランド

1588年、エリザベス1世率いるイングランドは、フェリペ2世のスペイン無敵艦隊(アルマダ)を撃退し、国家的勝利を収めました。しかし、これは終戦ではありませんでした。
スペイン艦隊の多くは壊滅的被害を受け、帰還できたのはわずか50隻。しかもその大半は北部港で修理を要する状態でした。この状況に、エリザベスと顧問団は「今こそ反撃の好機」と判断します。
その計画こそが、翌1589年に実行されたイギリス無敵艦隊(English Armada)遠征です。
ポルトガル王位とイングランドの思惑
当時ポルトガルは、かつての海洋覇権国であり、インドや東南アジアにも広大な勢力圏を持っていました。しかし王位継承争いの末、フェリペ2世がポルトガル王位を兼ね、スペインに併合。
ここで登場するのがドン・アントニオ――ポルトガル最後の王の庶孫で、フェリペ2世に王位を奪われた亡命貴族です。
イギリスは彼を王位に復帰させ、ポルトガルを再び同盟国にすることで、大西洋航路と植民地貿易の利権を取り戻そうとしました。
指揮官はフランシス・ドレイクとジョン・ノリス
作戦の中心人物は、私掠船活動で名を馳せたフランシス・ドレイクと、冷徹な軍人ジョン・ノリス(通称ブラック・ジャック)。
計画は大胆で、
- スペイン北部港に残る艦隊の残党を壊滅
- ポルトガルで反乱を起こしドン・アントニオを即位
- アゾレス諸島を占領して大西洋の制海権を確保
という三段構えでした。
国家予算では足りない…16世紀版クラウドファンディング
しかし問題は資金不足。
エリザベス1世の財政は、長期化するオランダ独立戦争支援と1588年のアルマダ撃退で枯渇していました。そこでドレイクたちが考えたのが、株式会社方式による民間出資です。
- 総予算:約7万ポンド
- 女王の出資:2万ポンド+艦船6隻
- オランダ:資金の1/8+兵員提供
- 残り:商人や貴族からの出資
投資家は占領地や拿捕船から得られる利益の分配を受けられる仕組みで、現代で言えば「戦争クラウドファンディング」に近いものでした。
投資家たちとその思惑
出資者には、東インド会社やモスクワ会社に関わる著名な貿易商が並びます。
例:
- リチャード・ステイパー:地中海貿易商。息子がスペイン異端審問で命を落とした経緯あり
- エドワード・オズボーン:レヴァント貿易の開拓者で、インド・ブラジル・中国との交易にも関心
彼らにとって、この遠征は「スペイン打倒」と「貿易利権拡大」の両面で魅力的な投資対象でした。
出発前からの誤算
しかし、計画は順調に進みません。
- オランダ駐留軍の撤退交渉が長引き、出発が遅延
- 徴兵志願者が予想以上に集まり、食料が急速に不足
- 出発時点で予算は2万6,000ポンド超過
結局、イギリス無敵艦隊は3週間分の食料しか持たずに航海を開始しました。
ア・コルーニャ攻撃とリスボン進軍
本来の目標サンタンデールではなく、誤った情報によりガリシア州ア・コルーニャを攻撃。しかし失敗。
その後リスボンを目指しますが、補給もなく40マイルを行軍し、多くの兵士が病死・戦死。
現地の反乱も期待外れで、リスボン市民はほぼ蜂起せず。ドレイクは包囲を諦め、戦利品を求めて独自行動に移りました。
遠征の失敗と帰還
最終目標のアゾレス諸島占領も、逆風と疫病で断念。
帰国時の戦利品はわずか3万ポンドで、出資者の期待は裏切られました。
この失敗はドレイクの名声にも傷をつけ、以後しばらく大規模な民間出資型軍事作戦は行われなくなります。
まとめ:歴史に残る「クラウドファンディング戦争」
1589年のイギリス無敵艦隊遠征は、エリザベス1世時代の最も野心的かつ商業主義的な軍事行動でした。
しかし、資金調達の革新性とは裏腹に、戦略ミス・情報不足・補給難が重なり、目的を達成できませんでした。
それでも、この遠征は「民間出資による戦争」という先例を残し、エリザベス朝イングランドの海外進出の野望を象徴する出来事として歴史に名を刻んでいます。
クラウドファンディング戦争に対するなんJの反応コメント抜粋

1: 風吹けば名無し
ドレイクさん、1588年は英雄、1589年は赤字社長
2: 風吹けば名無し
クラファンで戦争とか草
失敗したら株主総会で吊し上げやんけ
3: 風吹けば名無し
エリザベス女王「国庫スッカラカンや…せや!」→民間出資www
4: 風吹けば名無し
この時代のクラファン、返礼品はスペイン銀貨やぞ
5: 風吹けば名無し
ア・コルーニャ攻めたの誤情報ってマ?
情報戦で完敗してて草
6: 風吹けば名無し
ドン・アントニオさん、カリスマ性ゼロで泣ける
7: 風吹けば名無し
>リスボン市民蜂起せず
そら見知らぬ遠征軍に命預けたくないわ
8: 風吹けば名無し
最終戦利品3万ポンドて…赤字やんけ
9: 風吹けば名無し
ドレイク「包囲?興味ないね」→略奪モード突入
10: 風吹けば名無し
オランダ撤退遅延、風向き悪化、疫病コンボとか完全にフラグ回収
11: 風吹けば名無し
無敵艦隊(イギリス版)→速攻解散して草
12: 風吹けば名無し
クラウドファンディング戦争って語感強すぎる
13: 風吹けば名無し
エリザベス1世、出資者集めるの上手いけど経営は下手そう
14: 風吹けば名無し
ドレイクさん、投資家から臆病者扱いされて帰国とか地獄
15: 風吹けば名無し
この案件、現代なら確実に炎上して返金騒動やな

※なんJのコメントはときどき時代小説や時代劇や思い込みを史実と混同している場合があるから気をつけてね! 最後にクイズも用意しているよ!