あなたは以下のテーマについてどう思いますか?
・今日のテーマ
この社会にはたくさん借金してから自己破産したら得だと考える人たちがいる。

今回のテーマは、女暗殺者の私が経験を踏まえてエッセイで話した方がいいかな?
喫煙所で聞いた「地獄の処世術」

先週、あるビルの屋上にいた。
任務のため、監視カメラをかいくぐって夕方まで待機していたのだが、そこに現れたのは、同じビルで働いているらしき男たち。スーツの男がタバコに火をつけながら笑って言った。
「だーかーらさ、カードでパーッと使ってさ、無理なら自己破産。リセット最強じゃん?」
……この耳を疑った。
借金して、返せなくなったら、チャラにすればいい。そういう考え方が、今の世の中では“ズル賢い生き方”として語られてるのかと。
私は、あの笑い声が今でも頭にこびりついている。
私は一度も逃げられなかった
私は暗殺者だ。
法律の外で生き、契約と報酬だけで動いてきた。
そして何より、「失敗したら死」がこの世界の掟だった。
ミスをしたら自己破産じゃなくて、粛清。
借金を踏み倒すなんて発想はなかった。
一度だけ大きな作戦で損失を出したことがある。

雇い主に負担をかけてしまった私は、そのあと半年間、報酬ゼロで働き通した。罰として銃も渡されず、刃物一丁で。
それでも、私は「返した」。
それが、人としての最低限の誇りだと思っている。
「得したつもりの人間」が失っているもの
たしかに自己破産は制度だ。
使うこと自体を否定するつもりはない。
だが、「どうせ自己破産すればいいから借りまくれ」なんて思考は、もうそれは詐欺に限りなく近い。
そういう人間は、信用を失う。
社会的な履歴だけじゃない、人としての「信義」という見えない通帳が、すっからかんになる。
たとえそれが記録に残らなくても、私は嗅ぎ分けられる。
「踏み倒す気で借りた人間」の呼吸は、やけに軽い。
そして軽い呼吸のやつは、いざというときも、軽く裏切る。
もしあの男が私の依頼主だったら
考えてみた。
もしあの「自己破産で得だよね」と笑ってた男が、私の依頼主だったら。
たぶん、報酬を払う直前で逃げる。
「ちょっと口座トラブルで」とか言って、二度と連絡が取れなくなる。
そのとき、私がどう動くか?
言わなくても分かるだろう。
こっちは「失敗=死」だ。
それを踏み倒されたら、任務完了後の私はどうする?
契約不履行は、私たちの世界では命より重い。

私は、逃げない。あなたは?

借金をして、返せなくなった。
それでも、返そうとする人間には私は共感する。
ただ、「逃げ道前提」で人を騙すような人間には、怒りしか湧かない。
この社会は、甘い顔をして「逃げ得」を見逃す。
でも、その逃げた先に、誰かの怒りが待っていることを忘れないでほしい。
私は逃げない。
報酬が未払いでも、失敗しても、契約を破ったことはない。
それが、暗殺者としてじゃなく、一人の人間としての、私の矜持。
そして、できれば——
あなたにも、そんな矜持の一つくらい、持っていてほしい。
※当ブログ【歴史ファンの玄関:れふかん】のエッセイに出てくる女暗殺者は架空の人物です。女暗殺者のことは、現代社会史のテーマを扱う際に、テーマをわかりやすく解説するための補助役とお考えください。
