皇帝ネロは悪名高いローマ皇帝だ。
このネロに去勢されてネロの妻にさせられたという美少年がいたので、今日は彼のことを調べてみた。
美少年の名前はスポロスといった。
スポロスはネロの亡き妻に似ていた
ネロは奴隷の美少年スポラスの容姿が気に入った。
スポロスは容姿がネロの亡き2番目の妻に似ていたからだ。
ネロの2番目の妻は西暦65年に世を去った。
(最初の妻もネロが処刑して既に世を去っていた)
ネロのお気に入りだった2番目の妻の名前はポッペア・サブリナといった。
奴隷少年のスポロスはこのホッペアに驚くほど似ていた。
――。この話は本当だろうか?
性別が異なるのにもかかわらず、男性が女性に、しかも美女に似ることがあるのだろうか?
――世間は広いし、仮にそういう美少年もいるとしよう。
下世話な話だが、顔が綺麗なら、スポロスは彼と同年代の周りの女の子からモテて仕方がないはずだ。
――普通なら。
けれど、スポロスは女の子どころか、悪名高い皇帝、ネロからモテてしまった。
だからスポロスはネロに強制的に去勢されてしまった。
――去勢?
ネロは人間を去勢したのか?
スポロス少年は犬や猫ではない。
スポロス君がいくら奴隷の身分の少年だからって、去勢は同意なく無理矢理したらだめだ。倫理的に。
信じられないことだが、ネロが美少年を去勢した動機はこうだ。
ネロがスポロスを去勢した理由
ネロは容姿の似ているスポラスを亡き妻の代わりにしたかった。
だから男のスポロスを去勢して無理矢理にでも女にしたかった。
去勢したいぐらい、皇帝ネロはスポロスに深く夢中になった。
そのため、スポロスはネロに去勢させられた。
――こんなに気分の悪い話が現実にあったなんて、絶句するしかない。
ネロは妻を愛していたのか?
スポロスと容姿の似ているという、ネロの亡き妻ホッペアの死因はなんだろう?
ポッペアの死因には2つの説がある。一つは彼女が夫(ネロ)へ、彼が競馬に時間をかけすぎていることを叱責したとき、怒りの発作でネロが妊娠中の彼女を蹴り、彼女を胎児ごと蹴り殺したという説。
もう一つの説は、単純にポッペアが出産中に難産で死亡したという説だ。
前者なら皇帝ネロの人格は最低という他ない。
しかし、歴史は勝者や後世の人が記すものだ。
そのため、ネロが(後世ヨーロッパで覇権を握った)キリスト教をネロの治世のときに迫害したことから、後世のキリスト教徒から同胞の迫害を恨まれ、必要以上にネロが悪く言われている可能性もある。だから難産説もただちに否定することはできない。
が、キリスト教を迫害していた後世の嫌われ者とはいえ、それを差し引いてもネロには悪評が多すぎる。
――ストア派のセネカを自殺させる。少年を去勢。最初の妻の処刑。二番目の妻の蹴り殺し。母親との近親相姦。母親殺し。義弟殺し。先帝の毒殺(これは母単独の仕業とも)。ローマの大火事中に民を思いやらず自分はヴァイオリンを奏でる(これはデマ説濃厚)。ローマの大火事で建物が焼け消えたことをいいことに、跡地に自分のための黄金宮殿を建設。宮殿建設のための増税、神殿からの財産の略奪、富裕層からの搾取。政治家・軍人などの粛清(大量処刑)。残忍な処刑方法でのキリスト教徒大迫害。
ネロの2番目の妻の死因は、蹴り殺し説と難産説がありましたが、あなたはどちらの説を損じますか?
ネロの妻と夫
ネロとスポロスが結婚式を挙げる時点で、ネロには既に妻(3番目の妻)と夫がいてどちらも存命中だった。
――夫? 困惑する。ネロには夫までいたのか。
しかもネロと結婚した夫の方は去勢されていない。
んー。ネロの好みがわからない。
だが、どうやら、ネロはただの変態ではないらしい。
同性の夫を持ったり、少年を去勢させて婚姻を結んだりすることは、ローマ人にとっては権力の象徴、権力の誇示だった。
ローマ人にとっては現実を歪めることが権力を示すことになるらしい。
権力がなければ現実を歪められない。
絶対的な皇帝で権力があるからこそ、複数の妻を持ち、従順な夫を抱え、少年を去勢して妻にできる。
権力者だからこそ、歪んだ世界を現実として創造することができるという理屈だ。
一般人にはネロみたいなこと、やりたくても実現できない。
――やりたくもないだろうけど。
現実を歪める力を示すことは、確かに権力の誇示だ。
素晴らしい。
さすがは権力者様。
――と、本当になるのだろうか。
ローマの平民はそのあたりどう思っていたのだろう?
昔のローマの平民は美少年の妻がいる人を見て、本当に権力を感じ取っていたのだろうか?
美少年の妻を持つことはローマ人にとって羨ましいことなのだろうか?
もしかして、歪んだ現実が羨ましいのではなく、現実を歪める【力】【権力】そのものが羨ましいのか?
現代の日本人からしたら、いくら考えても古代のローマ人の感覚がわからない。
ただ、いずれにしても、そんなことのために男を奪われたスポロスはかわいそうだ。
ネロとスポロスの結婚式
ネロは結婚式でももちろん、スポロスに女の衣服を着させて、皇后として相応しい宝石類で彼を着飾らせた。
新婦となった去勢された少年、スポロスは結婚式でネロに石の指輪を贈った。
指輪には女神プロセルピナがレイプされているシーンが描かれていた。
これはスポロスからの暗黙の抗議が込められていた可能性がある。
なぜなら、その気になればスポロスはネロに、もっとロマンチックな指輪を選ぶことができたから。
ネロの死後のスポロス
ネロはスポロスとの結婚から約3年後、権力から追放されて、ローマから逃げて自殺した。
ネロという夫が死んだ後、妻のスポロスはどのような人生を歩んだのだろう?
解放されて自由の身になれたのだろうか?
現実は厳しかった。
ネロの死とそれにともなうローマの混乱の中で、スポロスはニンフィディウスという有力者にさらわれて彼の妻にさせられた。
ネロから解放されても再び、妻としての望まない生活を強いられたスポロスの人生は気の毒という他ない。
しかし新しい夫のニンフィディウスも権力闘争の渦中で部下の兵士に殺された。
そしてスポロスの身柄はオトという権力者に引き渡されて彼の愛人となった。
オトが失脚すると今度はヴィテリウスが権力とスポロスの身柄を掌握した。
スポロスの新たな主人、ヴィテリウスは、スポロスを民衆の娯楽のために剣闘士が使う闘技場で見せ物にすることを決めた。
ヴィテリウスはこの去勢された美少年の肉体を使って、民衆の前で見せ物【神話・女神プロセルピナのレイプ】の再現を計画した。
つまりスポロスの公開レイプが彼の新しい主人によって計画されていた。
たがらスポロスはこの最悪なイベントが行われる前に自殺した。
こうして短い生涯を終えた美少年は、実は本名さえも不明だった。
スポロスは本名ではなく彼の呼び名で、しかも侮蔑的な呼び名だった可能性が高い。
なぜなら、ギリシャ語の σπόρος (スポロス) は「種」または「精液」を意味する。
そのため、虐待が始まった後に少年に付けられた、軽蔑的な呼び名がスポロスで、スポロスという名前は彼の本名でなかったという説が有力。
ネロとスポラスの去勢の話へのまとめ・感想
*まとめ
・ネロは美少年スポラスを去勢した。
・去勢の理由は、スポロスの容姿がネロの亡き妻に似ていたからだった。
・また、男の性別を去勢で変更して強制的に妻にするなど、現実を歪める力を見せることは、古代ローマでは権力の誇示だったと考えられている。
・ネロの死後も、スポロスは権力者にとらわれ悲惨な生涯を歩み、最後は自殺するしか権力者から逃れる手段がなかった。
*感想。
権力者が悪人だと人を不幸にすることなんて簡単なんだね。権力者なら、権力を使って人を幸せにすることも簡単なはずなのにね
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