「賄賂を受け取らない権力者って素敵ですよね」
そう語るのは幕末ファンのI氏だ。
「幕末志士で薩摩藩士の海江田信義(有村俊斎)は、賄賂を受け取らなかった偉人なんですよ」
I氏によると、戊辰戦争の時期に、徳川慶喜の征討令が朝廷から下されると、海江田信義は東海方面の征討を担当することになったという。信義の役職は【東海道先鋒総督参謀】というものだった。
このとき、東海地方の諸藩は新政府に恭順の意思を示したが、小田原藩だけが藩内の意見対立から態度を鮮明にするのが遅れていたという。
「そんなときに小田原藩の重臣が使者に来ます。この使者は新政府軍の幹部一同の前で抗戦か恭順かを明らかにするのではなく、なぜか先に別室で海江田信義との単独の面会を求めます」
ここで使者は海江田信義に贈賄行為を実行したという。
「使者は、小田原藩が島津家の薩摩藩と縁故が深かったことから寛大な処置を要望しました。さらに藩主からの賄賂を連ねて書いたものを示し、あなたへの贈り物です、受け取っていただけると幸いです、と海江田信義に渡しました」
海江田信義はこれに怒ったという。
「海江田信義は使者に『あなた方は本当に朝廷に帰順する気があるのか?』と問いました。使者が『本当に帰順するつもりです』と答えると、信義は『それならば(私情を持ち出して言った)島津家との縁故云々の発言を取り消し、贈賄の件も撤回して改めて恭順の意思を示すように』と伝えました」
I氏は言う。
「欲に流されず、私腹を肥やすことを考えず、賄賂を断るなんて海江田信義はかっこいいですよね」
「私は何の権力もないただの歴史ファンですが、誰か私にも賄賂を持ちかけてくださいよ。そうしたら私も大金をもらえ――もらおうか迷った後、きっと、海江田信義みたいにかっこよく断ってみせるのに」
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