【逃亡】織田信長と観音寺城。六角義賢や近江国民から見る観音寺城の戦い。

織田信長と観音寺城の今回の記事は農民視点になります。

観音寺城は古い城

現代の滋賀県で暮らす人々にとって県庁や市役所は地域のシンボルです。

同じように戦国時代の近江国（≒滋賀県）で暮らす農民たちにとって観音寺城は地域のシンボルでした。

観音寺城は大昔の南北朝時代に築城されたため、戦国時代の農民にとって生まれたときから存在する身近なお城でした。

また、観音寺城は標高４００メートル以上の高地に立つ山城であったため遠くの村からも仰ぎ見ることができました。

そんな古いお城は代々【六角家】のお殿様が居城としてきました。

そんな中、農民たちがいつものように暮らしていたある日、尾張（≒愛知県の西半分）と美濃（≒岐阜県）を支配していた織田信長が観音寺城に攻めてくるという知らせが村に届きます。

それは現代に例えると、愛知県知事と岐阜県知事が軍隊（私兵・傭兵）を率いて滋賀県庁を占領しに来たような衝撃でした。

観音寺城を織田信長が攻めた理由

この頃の織田信長は美濃から兵を率いて京都に向かいたいと思っていました。

それは織田信長を頼って岐阜に来た足利義昭を京都に連れて行き第１５代将軍に就任させたかったからです。

しかし岐阜から京都に向かう途中で南近江（≒滋賀県南部）の道を通らなければなりません。

ところがこの道に敵の城である観音寺城が堂々とそびえ立っていました。

通行の邪魔をされたくない織田信長は交渉のため近江に赴きます。そして観音寺城主の六角義賢に足利義昭を伴い上洛する際の協力を求めました。

織田信長はこの交渉のために一週間も近江に滞在していました。しかし結局協力は断られてしまいます。

仕方なく織田信長は岐阜に帰り、六角義賢の観音寺城を力攻めに攻め落とすことを決意します。

六角義賢の家臣が観音寺城の防衛を放棄する

農民たちの不安はつのります。

六角義賢の家臣たちが次々と裏切って織田信長の味方についたからです。家臣たちは観音寺城の防衛を放棄しました。

それはまるで滋賀県内の市長たちがこぞって愛知県知事と岐阜県知事の味方をしたかのような衝撃でした。

南近江で暮らす農民（市民）に対して家臣（市長）は織田信長に従うように指示します。

このため農民（住民）も観音寺城を守ろうとはしませんでした。

このような裏切り者の家臣が続出し、一部の家臣しか観音寺城の味方にはならず、六角義賢の織田信長に対する不利は決定的になります。

観音寺城の戦い

ついに決戦の火蓋が落とされたので農民たちは山に避難して戦況を見守ります。

六角義賢は後方の観音寺城を防衛するために、前方の十数個の小城で防衛線を張る戦略を採用します。

農民たちの耳にも、織田信長はまずは最前線の【和田山城】を攻撃するだろうと言う話が届いていました。

ところが織田信長は和田山城を突破する正攻法を採用しませんでした。

別の箕作城に兵力を集中させ、木下秀吉や丹羽長秀、滝川一益や織田信長本人が攻めかかります。

箕作城 はあえなく落城し、これをみた和田山城の兵士も城を開城して逃亡します。

六角義賢は観音寺城一城で織田信長と戦う計画は立てていませんでした。

政務に便利なように築かれていた観音寺城自身の守りはそこまで頑強ではなく、そのような計画を立てることができなかったのです。

それにもかかわらず重要な防衛線であるはずの箕作城と和田山城が落城してしまったため、六角義賢は城を捨てて甲賀（滋賀県南東部）に逃亡しました。

農民たちは村に戻り、地域全体で大規模な戦闘が起こらずに、戦いも短期間で済んだことを喜びあいました。

長期間の戦いが起きると田畑の荒廃が酷くなるため危惧していたのです。

観音寺城のその後

観音寺城は廃城にされたという説と、織田信長が廃城せずに安土城の防衛線として組み入れたという二つの説があります。

しかしいずれにしても観音寺城は織田信長が新しく近江の地に築城した安土城の強烈なインパクトによって人々の記憶から薄れていきました。

そしてやがて新しく生まれてきた農民の子供たちにとって観音寺城は知らない存在となります。

江戸時代中期になると本当に自分の目で見た観音寺城を記憶する人はいなくなってしまいました。

参考文献。日本大百科全書。世界大百科事典。日本国語大辞典。国史大辞典。日本人名大辞典。日本大百科全書。他、図書館の多数の書籍。